コロナ禍のため2020年〜2022年と中止していた第30回海外環境衛生施設視察を4年ぶりに10月 1日(日)〜8日(日)の現地5泊、機内2泊の8日間で、イタリアのごみ焼却施設、リサイクル施設、水処理施設の3ヵ所3施設を回る行程で実施しました。
視察団は小武海団長、大黒田副団長以下合せて11社19名に事務局1名を加え、20名の参加者となり、また現地は天気にも恵まれ、事故やトラブルもなく、予定どおりの行程で視察を終え、笑顔で帰国することができました。
視察の概要は以下のとおりです。(視察順)
1.A2Aアンビエンテ社 アセラごみ焼却・発電施設
(A2A Ambient S.p. Accerra Termovarizzatore)
ナポリ市(イタリア)
視察したアセラ廃棄物発電所は、イタリア ナポリ市の北約30Kmに位置しており、ナポリ市などが属するカンパニア州の分別取集されずリサイクルできないごみの70%を焼却し、発電施設によりエネルギー回収を行っている。カンパニア州においては廃棄物分別収集率が50%を超えており、プラスチック、金属、紙、生ごみがリサイクルされているため、廃棄物の発熱量低下が心配されるが、受け入れる分別収集されていない水分の多いごみ(有機性廃棄物)は前処理にて水分を減したものを受け入れているため、ごみ発熱量の低下は無いとのこと。
ごみ処理費用は、州政府が一定額負担し、各都市はごみ税から費用負担をしている。なお、施設立地自治体の負担額は安く設定されている。
施設の維持管理では、ボイラ仕様は蒸気温度500℃、蒸気圧力90barと高いが、実際の操業においてはボイラ過熱器等の損傷・寿命を考えて460℃〜470℃、77bar〜80barと下げて運転している。
本施設を含む焼却処理施設の設置に強い住民反対があったためか、雇用確保と住民対応として地域などから数多くの学生などの見学者を受け入れるとともに、構内にミツバチを飼っており排ガスなどの安全性を強調している。
本施設の運営管理はA2A社グループのA2Aアンビエンテ社が2010年3月より行っている。なお、親会社のA2A社は2008年ユーティリティ企業AEMとASMが合併ししてできた株式会社で、ミラノ市、ブレシア市がそれぞれ株式の25%所有しており、A2A社グループは、廃棄物発電施設を7施設、MBTを9施設など保有、運営している。
A2Aアンビエンテ社 アセラごみ焼却・発電施設 説明風景
小武海団長のイタリア語での挨拶
(対応者)パオロ・ロッシニョーリ氏 地域熱供給施設責任者/カンパーニャ州
全施設責任者
「A2Aアンビエンテ社 アセラごみ焼却・発電施設 中央制御室」
「A2Aアンビエンテ社 アセラごみ焼却・発電施設 集合写真」
2.エコロジー ヴィテルボ社 カザーレ・ブッシMBT施設
(ECOLOGIA VITERBO s.r.l. Impianto di Trattamento Meccanico Biologico in Loc. Casale Bussi )
ヴィテルボ市(イタリア)
視察したカザーレ・ブッシMBT施設は、ローマ市から北に90kmの所にあるヴィテルボ市西部の農業地域にあり、ラツィオ州のヴィテルボ県とリエティ県の分別収集されていない混合都市固形廃棄物を受入れて処理している。1日の最大処理能力は約600トンである。
このMBT(機械的生物学的処理 Mechanical Biolgical Treatmennt)プラントでは、混合廃棄物を破砕、選別、ふるい分けによって可燃物、不燃物、有機性廃棄物分けて、可燃物からはRDF(廃棄物由来燃料)製造し、不燃物から鉄、アルミニュウムを回収し、有機性廃棄物は生物処理(コンポスト化処理)にてFOS(安定化有機物)を生成している。
RDFは圧縮梱包し廃棄物発電所の燃料として、国内およびポルトガルやデンマーク・スペインに逆有償にて輸出している。FOSは、生物処理によりBOD(生物化学的酸素要求量)が埋立基準の1,000ppm以下となり埋立処理される他、含水率も発酵熱で減少するため、廃棄物発電所に搬送し焼却処理される。
エコロジー ヴィテルボ社は2004年に Ecologia 2000 S.p.A とViterbo Ambiente S.c.a.r.l.の廃棄物処理部門が合併してできた会社で、廃棄物リサイクル部門全体で事業を展開し、MBT施設、堆肥化施設、無害廃棄物埋立地運営管理する民間会社である。"
エコロジー ヴィテルボ社 カザーレ・ブッシMBT施設 説明風景
(対応者)パオロ・マグリー二氏 建築家 MBT施設テクニカルデレクタ―
「エコロジー ヴィテルボ社 カザーレ・ブッシMBT施設 説明風景」
「エコロジー ヴィテルボ社 カザーレ・ブッシMBT施設 集合写真」
3.パブリアクア社 アンコネッラ飲料水工場(水処理施設・浄水場)
(Publiacqua S.p.A Impianto di potabilizzazione Anconella)
フィレンツェ市(イタリア)
視察施設は視察先都合により下水処理施設ではなく飲料水工場(水処理施設・浄水場)となった。
視察先のアンコネッラ飲料水工場はフィレンツェ市のアルノ川河畔に位置している。アンコネッラ飲料水工場は、アルノ川の水を水源として浄化することを目的として4,000L/sの流量で設計されている。供給対象人口は約127万人で水道管総延長は7,162kmである。
当初アルノ川の水質は降雨の影響を受けていたが、上流にピランテーノダムが完成してからは、水質が大幅に改善された。
水道水は直接口にするものであることから、処理工程では細心の注意が必要である。特に有害物質の混入は直ちに発見できなければならない。アンコネッラ飲料水工場では、取水から配水までの工程20カ所に測定モニターを設置して、24時間監視をしている。また、定期的に公定法による水質分析を実施している。
日本では水道水は飲料水として自然に受け入れられているが、イタリアでは飲料水は買うもの、いわゆるミネラルウォーターという考えが根強い。そこで、アンコネッラ飲料水工場では、見学者に対して(特に子供の見学者に対して)飲料水として認識してもらう啓発活動に取り組んでいることが、とても印象的であった。
パブリアクア社は複数の自治体が60%、民間企業Acque Blu Fiorentine S.p.Aが40%の株を持つ半官半民の企業で飲料水の製造/浄水場と供給、廃水の収集とその浄化を行っており、統合水道サービスを提供する会社である。本施設の近くにある下水処理施設も運転管理しており、下水道管総延長は3,767kmとのこと。
パブリアクア社 アンコネッラ飲料水工場/水処理施設・浄水場 説明風景 記念品贈呈
(対応者)ダリア・キエリーニ氏 施設見学案内担当者
「パブリアクア社 アンコネッラ飲料水工場/水処理施設・浄水場 説明風景」
「パブリアクア社 アンコネッラ飲料水工場/水処理施設・浄水場 集合写真」
全ての視察先で、事業の成り立ち、操業体制、今後の展開等について熱心に説明があり、また質疑応答や施設見学に予定時間を超過して対応していただきました。それぞれ異なる事業主体での処理体制を視察し、その背景や考え方を知ることができ、日本との違いを含めて、今後の業務を進めていく上で、おおいに参考となる有意義な視察となりました。
視察の詳細は当協会の機関誌「環境施設マネジメント」77号(来年3月発行予定)に掲載する予定ですので、ぜひご一読いただければと思います。